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よろしくお願いします!

山崎さん

「神様はいると思う?」こう聞いてくる客には気をつけろと僕はバイトの初日にそう教わった。
そう聞いてくる男は"山崎さん"と呼ばれており、だいたい夕方頃から夜にかけて現れて、お客さんが減るとレジに来てひたすら話しかけてくるという。そのくせ、大したものを買わず、邪魔ばかりしてくる迷惑な客ということだった。
僕は初め、昼だけしかシフトに入っていなかったのだが次第に慣れていき夕方から夜の時間も入るようになった。
その頃には他のバイトのメンバーとも打ち解け、僕は常々「山崎さんと仲良くなりたいわぁ」と調子に乗っていたが、いつも決まって「いやいや想像以上にやばいから」と言い返されていた。



そしてついに僕は彼に出会うことになる。


夕方のシフトに入り始めて3日ほど経った日。彼は入店するなりなかなかのボリュームで「あれー?!見ない顔だね?!」と僕のいるレジに詰めかけてきた。歯がところどころないせいか滑舌がものすごく悪いし、声がとにかくでかい。
確かに言われた通り、想像以上の見た目と声の大きさで確かに怖いと感じた。


ただ、僕も啖呵を切った手前、ビビってはいられない。
「うぇーい、よろしくっすぅー」と左手で山崎さんの肩を横からトントンと叩いてやった。
すると山崎さんは満面の笑みで「ところでさぁ‥」と言った。


僕はきたっ!あの質問!僕はその質問の答えを前もって用意しており、こいっ!と待ち構えていると何故か山崎さんは「宇宙人っていると思う?!」と言った。


僕は驚いた。この感覚、あのときと同じだ。
大学のテストでこの先生は毎年全く同じ問題を出すから過去問やっておけば絶対大丈夫と言われたのにいざ受けてみると全く見たことない問題ばかりだったあのときと。


僕は少し言うのをためらったが「いるよ!だって山崎さんって宇宙人でしょ?」と答えた。


すると山崎さんは「違う!」と歯を剝き出しにして怒鳴った。
歯はあまりなかったが声量は店内に響き渡るほど十分にあった。
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それから山崎さんは毎日来るようになってレジにいる僕に歯を剥き出しにして”にぃ~”と笑い何も言わず去っていくようになった。


隣のレジの先輩が口ずさむ。


山崎さんちのツトムくん
このごろすこ~し変よっ
どうしたのっかっなっ?

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