趣味とコレクション

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布団の上の3時

布団の上で3時を迎える。朝の3時ではない。夕方3時。つまり15時だ。
今日も何もしていない。パンダならそれでもいいが僕は許されないはずだ。


布団の上をじっと見つめる。
思いの外、髪の毛が落ちている。僕は布団の上に寝転ぶ、あまりにも質量感のない髪に語りかける。
「どうして君は僕を置いていくのかい」
僕は去るものを追わぬ主義。君がついてこれないならそれまでだ。


それにしても蝉がうるさい。どこからそのやる気が湧くのか。体育祭の時、金切り声でキャーキャーと喚く女子に"蝉"とボソッとつぶやいた彼をふと思い出す。
彼は今、何をしているだろうか。僕と同じで布団の上に転がっているかもしれない。


もし今、南海トラフ地震が発生したら僕は布団から起き上がるだろうか。
起き上がらない気がする。彼も起き上がらない気がする。


揺れている景色を見ながら何を思うだろうか。セミは鳴き続けるだろうか。


窓の外を救急車が走り抜ける。サイレンを鳴らしながら。
お盆に甲子園。世間は夏まっしぐら。


さて、まずは顔を洗おう。

額の中のナポレオン


僕の額にナポレオンが産まれた。
革命という名の旗を引き下げ、我について来いと言わんばかりの態度を示す。


そう。僕の前髪は日々後退して行き、ナポレオンの進軍を止められない。
もともと僕の額(領土)は広かった。
生まれつき豊かな土地を手にしていたはずだ。思春期には大きなニキビも育ったあの土地だ。
それなのになぜ?ナポレオンは領土を拡大しようとするのか。


何が彼を突き動かしているのか。
おそらく理由などないのだろう。ただ、自分の運命(遺伝)に基づき、彼は進軍しているのだ。


それならばこちらにも考えがある。新兵器で対抗するしかない。
風呂上がりに育毛剤を投入し、ナポレオンの進軍を止めるまでだ。


しかし、半年ほど続けていたが、やはり前髪は徐々に後退している。
恐るべしナポレオン。さすがは皇帝まで上り詰めた男。
やはり君の辞書に不可能という言葉はないのかもしれない。


僕はこの先、地道な戦法でこの戦争を長引かせることしか出来ないのであろう。


そしていつの日か僕はこの戦争に完全に敗北し、落ち武者になるはずだ。

レジでの失態

スーパーでレジに並んでいたら、アルバイトの若い女の子が僕の前のお客さんの会計に手こずりすごく待たされた。
僕の番が来た時に「お待たせしてすみませんでした。」と謝られたがその顔があまりにも必死だったのでとてもかわいそうに思えた。


僕も大学生の頃、コンビニでアルバイトをしていたのでレジの大変さはよく分かる。特に慣れないうちはとんでもないミスをしてきた。


初めてお昼のシフトに入った時、その日は僕の働いていたコンビニの近くで工事があり、昼時になると大勢の工事現場の人が入ってきた。またその日は暑い夏の日で、工事の人達はイライラしており、とても恐ろしく僕は並ばれる前から嫌な予感がしていた。


そういう勘は当たるもので工事の人達はいっぺんにレジに並んできた。しかも最悪なことに隣のレジにおばあさんが宅急便を持ってきたため、僕一人でその人たちを捌かないといけない状況に陥った。


電子レンジをフルに活用するもどうしても時間がかかる。工事の人も休憩時間に限りがあるらしく、並んでいる間、ますますイライラしていた。その中でも特にイライラしている人がおり、先ほどから僕をにらみつけて舌打ちとため息でビートを奏でている。


温めの3分間が永遠に感じ、僕はプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。


すると、僕をにらみつけていた人が急に割り込んできて「ざるそばだから先に会計しろ」とレジにざるそばとお茶を投げ出してきた。あまりの形相に僕は震えあがった。


今、対応しているお客さんのを保留にして新規に対応すればいいのだが、なんせ入ったばかりでそういうものに慣れていない。手こずりながらもなんとか操作して保留にしたのだが手際の悪さに工事の人は怒りの頂点に達していた。その表情を見た時、僕は頭が真っ白になった。


そしてざるそばを縦に入れた。お茶と同じように縦に入れた。
すると「お前絶対わざとだろう!!」と胸ぐらをつかまれた。


もうそのあとのことは覚えていない。
店長が飛んできて謝っている姿をぼんやりと覚えているが、事が過ぎた後、「大丈夫だからら気にしないで。辞めるなんて言わないで」と言われたのでおそらく辞めようとしていたのだと思う。


そんな、経験を持つ僕が女の子に言った「大丈夫。気にしないで」はさぞ、説得力があったことだろう。