趣味とコレクション

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追憶の救急箱

ブエノスアイレス

やけに太ももが痒い。ズボンをめくって見てみると赤い斑点が2つある。

ダニかもしくは蚊か。

どちらにせよ痒くて仕方がない。掻いたら痒みが増してきりがない。


このかゆみを抑えなければストレスで胃がチーズのように穴だらけになってしまう。

そこで僕は引き出しから救急箱を取り出した。


この救急箱は大学進学の為、上京する時に持たされたものだ。

「必要なものはすべて入っているから」そう母親に言われ渡された気がする。


きっと、この箱の中に僕の痒みを抑える特効薬が必ず入っているはずだ。

就職などで拠点を移すたび肌身離さず持って来た甲斐があった。


そっと箱を開けると「しっしん、かゆみ」と書かれた塗り薬がちゃんと入っていた。

しかしその塗り薬、中身は半分以上入っているがやたら黄ばんでいる。 


恐る恐るひっくり返して使用期限を見てみるとそこには”2008.11”文字が刻まれていた。


おかしいだろ?!

いや、正直、今までその救急箱の中をろくに確認せずずっと放置していたのは事実だが、

俺が上京したのは2016年だぞ?!


2008年と言ったらわしゃ11歳じゃ!何も恐れず半ズボンでクワガタ取りに行ってた頃じゃ!

しかも詳しくは分からないがかゆみ止めなんて3年くらいは持つんじゃないか?

とすると、2005年に買ったことになるな。最後に使ったのいつだよ!

ランドセル買ってもらったときくらいじゃないのか!


よくもまあそんなものをひとり寂しく旅立つ息子に持たせたものだ。

旅立つ我が子を心配するふりをして。

本当は家にあるいらないものを詰め込んだだけじゃないのか?


さすがにここまで使用期限が過ぎていると使うつもりはなかったのだがなんの気なしにキャップを開けてみると塗り薬を染み込ませている青いスポンジの部分が溶けており青色の液体となって流れ出てきた。


それが僕の指についたので急いで洗い流したが僕の爪の間からはかすかに17年前、もしくは20年以上前の懐かしい香りがしてあの時を思い出すと同時にこれ大丈夫か?とものすごく不安になっている。

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背中

ブエノスアイレス

プシュッ。夜、外を歩いていると缶ビールを開ける音がした。


今日は家から一歩も外に出ていなかったので夜11時まで営業しているドラックストアへ歩いて向かっている時だった。


公園のベンチに一人腰掛け、おじさんがうつむきながら缶ビールを飲もうとしていた。

おじさん以外誰もいない公園。街灯の明かりに蛾がよってたかっていた。  


ものすごく寂しげな背中が脳裏に焼き付いた。  


ドラックストアで買い物をしている最中、あのおじさんのことを考えた。なにか不幸なことがあったのか。それとも奥さんと喧嘩したのか。ただ夜風に当たりながらビールを飲みたかっただけかもしれない。


いずれにしても僕には全く関係のない話だ。ただ何故かあの背中が頭から離れない。


ドラックストアからの帰り、そのおじさんはもう座っておらず代わりに高校生くらいの男女が体をくっつけ二人で携帯を覗き込んでいた。


街灯の明かりと携帯の明かり、おじさん同様、背中を丸めうつむいていたがそこに寂しさは微塵も感じなかった。


僕はドラックストアでアイスを買っていたことを思い出し急いで家に帰り、部屋に着くなり電気もつけずに冷凍庫にアイスをしまった。


冷凍庫の薄暗い明かり、背中を丸めてアイスをしまう僕の姿は寂しさをまとっていたのだろうか。

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悲しき選択

ブエノスアイレス

僕は高校に入学する際、携帯電話を買ってもらったのだがその際、スマートフォンではなくガラケーを選択してしまった。 


2013年当時、新規のガラケーを購入する人は高齢者がほとんどで、4月から高校に入学する僕は特異な存在だった。

もちろん周りからは「スマホがいいんじゃない?」「みんなスマホだよ」などと言われたがスマホを買ってもらい浮かれた同級生たちに嫌気を指していた僕は周りの意見を一蹴してガラケーを選ぶというなんともパンクな選択してしまった。


高校に入学してからすぐにクラスのグループラインが作られた。もちろん僕は蚊帳の外。

「〇〇さんからライン追加されたわ〜」「俺、昨日1時くらいまで〇〇ちゃんとラインしてたわ」などと教室はラインの話で大盛り上がり。 

僕はこんなの一過性に過ぎないと自分に言い聞かせガラケーを開いては閉じた。 


その後、今度はパズドラというスマホゲームが流行りだした。「あいつ〇〇のキャラ当てたらしいよ」「今度のガチャめちゃくちゃ熱いよ」などと教室はパズドラの話で大盛り上がり。僕はパズドラのパの字もわからず蚊帳の外。 

僕はその頃集めていた板尾創路のガチャガチャのキーホルダーを机に並べて「このガチャのほうが熱い」と自分に言い聞かせた。


そんな僕にも、文化祭か体育祭かの連絡したいとかでメールアドレスを教えてくれた女の子がいた。僕はうれしくなってどうでもいいようなことをメールで送った。しかし返信は来ず、次の日学校で「ショートメールお金かかるからやめて」と直接、告げられた。これこそダイレクトメール。僕の心に重く突き刺さった。


しかし、ガラケーにもいいところもある。野球部に所属していた僕は、チームメイトが授業中に携帯を触っており、没収された部員の連帯責任として何週間か顧問に携帯を預けることになった。みんな嫌々携帯を顧問に差し出す中、僕はどうってことないという顔で顧問に携帯を差し出した。何週間でもどうぞという感じで。そしたら「あ?ガラケー?これはいいわ」と突き返された。


僕は悲しかった。こんなとこまで仲間外れ…。みんなと同じになれない。パンクな選択をしたばっかりにいつまでもパンクな生き方を虐げられる。


みんなが部室で「お前のせいで彼女と連絡とれなくなっただろ」と授業中に携帯をしていた仲間を責めているとき僕はガラケーをパカパカしていたら「お前はいいよな何の影響もなくて」と言われ僕は今までの色んなことが込み上げてきて

「お前に俺の気持ちが分かるか!こっちは天気見ることくらいしかすることがないんやぞ!充電だってな1週間に1回くらいしかしねーんだぞ!」と感情的に言い返したら

「そうだよな。ごめん…ちなみに今日の天気は?」と聞かれ「ずっと雨だよ。俺の気持ちと一緒で」と答えたら「そっか…俺、天気も見れねーからさ…」と悲しい顔で笑ったチームメイトを見て、初めて仲間ができたと僕はうれしくなった。

よろしくお願いします!