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過去から来た車

会社からの帰り道、サイレンを鳴らしたパトカーが僕の車を追い越した。何かあったのかと思いながら運転していると徐々に道が混んできた。


時速10キロくらいまでスピードが落ちてきたころに突如、対向車線に側溝にはまった車が飛び込んできた。いや、はまったというよりむしろ突っ込んだといった方が正しい。


なんせ後輪が浮いている。バックトゥザフューチャーのように車が空から降ってきて側溝に突っ込んだとしか考えられないはまり方をしている。あまりにもあり得ないはまり方をしているため、他の車がスピードを落として凝視してしまう。


そのための渋滞だった。対向車線が混むという類まれな例だ。もちろん好奇心旺盛な僕もスピードを最大限に落として、というかクリープ現象で走り、事故を観察するつもりだ。


僕に与えられる時間は少ない為、事故の状況把握は手前の段階で終わらせておく必要がある。
 まず、事故が起きている道はとても狭く、カーブが続くような道だ。法定速度も40と遅めの設定だ。そしてこのはまりかたを見る限りよほどのスピードを出していたに違いない。


事故を起こした時間はさっきパトカーが駈け付けていたのを考慮すると18時半ごろであろう。こんな時間にこの道でスピードを出す男はド級のヤンキーに違いない。突っ込んでいる車の車種はあまり詳しくないが、黒のプリウスだと思う。ちょっと雲行きが怪しいが、まあ、ぶっ飛んだ奴に変わりはない。


 そして僕の車が事故の現場に近づいてきた。僕はアクセルから足を外し、辺りを見渡す。数人の警察の中にその人はいた。


眼鏡をかけたちょっと小太りのおじさんで爪をかじりながら携帯をいじっている。どちらかと言えばオタクっぽい感じだ。いや、そんなことはどうだっていい。ただ何よりも注目するべきはその携帯がガラケー(旧携帯)だということだ。


これが何を意味するか。そう彼はやはり過去から来たということだ。オタクっぽいのもメカオタクなのだろう。張り詰めた表情で携帯をいじっているのは博士かなにかに連絡が取れなくて焦っているからか。かわいそうに。


彼はこの先、令和の時代を生きていくのか、それとも平成のあの時代に戻ることが出来るのか、僕はアクセルを踏み込みながら考えた。

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