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何かを待つ人

バス停に立っている人は基本的にバスを待つ人だ。
目当てのバスが来たらそれに乗り、消えていく。
以前住んでいたアパートの近くにバス停があった。時刻表の書いた柱があるだけの椅子も屋根もないバス停だ。辺りには藪が広がっており、本当にこんな場所にバスが来るのか?と思わせるようなところだった。
そんなバス停に毎日立っている人がいた。僕が帰宅する19時過ぎにスーツを着たおじさんが立っていた。しかも、道路に背を向け、うつむき加減で藪を見つめいる。


最初は、変な人がいるなくらいにしか思わなかったが、それが毎日いるとなると少し薄気味悪くなってきた。帰宅時間にも多少の差はあるのだが、その人は微動だりせずに背中を見せて必ず立っている。


本当にこの人はバスに乗るのだろうか。僕はそのことがどうしても気になってしまい帰宅後、その人の隣でバスを待ってみようかとバス停に向かった。


すると、そのバス停には誰もいなかった。そしてそのバスの時刻表を見ると最終便は18時半だった。僕は急に恐ろしくなって走って家に帰った。


そのおじさんは一体、何を待っていたのか。果たしてその人は本当に存在していたのか。
あの薄気味悪い背中を思い出すと怖くなるので、今はあの藪でツチノコでも探していたのだろうと思うようにしている。

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