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ユニークな寺

 僕が仏像に夢中だった頃。休みがあれば寺巡り。どんな山道だって仏像に会えるなら気にしない。その日も僕はとてつもない山道を抜けてある寺に向かっていた。そこの寺の仏像は住職の手作りでとてもユニークなものばかり。仏像も気になるがそれを作った住職も気になる。僕は期待を膨らませ寺に向かった。



 寺に到着するなり、小さい子供が僕のほうに駆け寄ってきた。小学1.2年生ぐらいだろうか。すこしぽっちゃりしたかわいい男の子だ。しかしどうしてこんな山の中に子供がいるのだろうか。僕はすこし不安になりその子の頭をなでながら「ここで何しているの?」と聞いた。すると「ここは僕のお父さんのお寺~」と答えた。なるほど、ここの住職の息子さんか。


 しかし、こんな山奥に一人でいるなんてさぞ寂しい思いをしているのだろう。
するとその男の子は僕に抱きついて「わあ~お母さんの香りがする~」と言った。
ちょっと待て。たしかに僕はその当時、髪が肩につくほどあったが顔はどう見ても男だし、声も低い。勘違いしているわけではなさそうだが、少年はまだ「お母さんの香りがする」と呟きながら頬をすり寄せている。


 もしかするとこの子にはお母さんがいないのかもしれない。それでこんな僕にでもお母さんの面影を感じ甘えてくるのかもしれない。少し寂しい気持ちになりながら僕はこの子と手をつないで境内を案内してもらうことにした。


 そこでいろんなことを聞いた。サッカー選手になりたくていつも一人で練習していること。なかなか友達と遊べないこと。お寺の子供はあまり女の子からモテないこと…話をするたび切ない気持ちになる。ただ、対照的に仏像がとてつもなくユニークで、ものすごくシュールな状態になる。体中にムカデを巻きつけているもの、目玉が異常にでかいもの。これらの前で僕はきっとサッカー選手になれるよとか、大人になれば女の子にモテるよとか励ましてもきっとあまり響いていないだろう。ごめんな。あまり力になれなくて。


 そして僕らはおおよそすべての仏像を見終え本堂付近に戻ってきた。
「そろそろ帰るね」と僕が言うと、「もう少し居て」とその男の子は寂しそうな顔で見つめてきた。僕はあまりに切なく「じゃあもう少し…」と言うと本堂からお母さんが出てきて「どこ行ってたのよ!今日は友達来るんだから早く宿題しなさい」と言い、僕にすいません~と頭を下げた。すると男の子は満面の笑みで「そうだったぁ~」と本堂に入っていった。


 あっけにとられ少しの間、立ち尽くしてしまったが、これもこの寺の魅力かと無理やり納得し、僕は服をパタパタさせ、お母さんのにおいを残しながらその寺を後にした。

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