もれる
僕は走っている。できれば走りたくはなかった。
間に合いそうにないから走っている。
集中力を切らさないように。
スーパーの駐車場に車を停めて、最初は歩いていた。でも、やっぱり走った。間に合いそうにないから走った。
向かうべきとこは入り口横のトイレ。
漏れないように力を入れてる。口をぎゅっとつぐむように。
病院の先生は言っていた。この薬はお腹を緩める可能性があると。そのことを今になって思い出す。
トイレが空いていれば間に合いそう。
ズボンに片手を添えて扉を開く。空いていた。間に合った。
と思ったら、何かおかしい。
ほうきがある。ホースもある。よく見りゃ水道もある。
きっとここは用具入れ。
つぐんでいた口が笑いだす。ぷぷぷと笑いだす。
気が抜けて笑ってしまったよ。
さぁ、掃除の時間だ。