額の中のナポレオン
僕の額にナポレオンが産まれた。
革命という名の旗を引き下げ、我について来いと言わんばかりの態度を示す。
そう。僕の前髪は日々後退して行き、ナポレオンの進軍を止められない。
もともと僕の額(領土)は広かった。
生まれつき豊かな土地を手にしていたはずだ。思春期には大きなニキビも育ったあの土地だ。
それなのになぜ?ナポレオンは領土を拡大しようとするのか。
何が彼を突き動かしているのか。
おそらく理由などないのだろう。ただ、自分の運命(遺伝)に基づき、彼は進軍しているのだ。
それならばこちらにも考えがある。新兵器で対抗するしかない。
風呂上がりに育毛剤を投入し、ナポレオンの進軍を止めるまでだ。
しかし、半年ほど続けていたが、やはり前髪は徐々に後退している。
恐るべしナポレオン。さすがは皇帝まで上り詰めた男。
やはり君の辞書に不可能という言葉はないのかもしれない。
僕はこの先、地道な戦法でこの戦争を長引かせることしか出来ないのであろう。
そしていつの日か僕はこの戦争に完全に敗北し、落ち武者になるはずだ。