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楽器遍歴

 僕は歌を歌うことが苦手だ。いわゆる音痴というやつで、カラオケに行った際には他の人は音階のバーが綺麗になぞられていき、途中、こぶしか何かの記号が出てキラリっと光ったりするのだが、いざ僕がマイクロフォンに声を吹き込むと音階のバーが僕と同じ極の磁力を帯びているのかと思わせるほど見事に反発しあう。


バラバラに散らばった音階を眺めブルーになり、さらに平均点を大きく下回る点数に泣きそうなる。その為だろうか、僕は楽器を弾く人にものすごく惹かれる。生まれ変わったらバンドマンになって「振られたことないから失恋ソング書けねぇー」って言うことが夢なくらいだ。


 そんな僕は昔から楽器に手を出しては諦めてきた。

 最初はオカリナを買い、音を出すことができずに断念。そしてハーモニカなら音を出せると思ってハーモニカを購入するも吹いたり吸ったりと音は出せるが思ったより複雑で断念した。

 この時に僕は音楽を諦めようかと思ったが、そんな時、アフリカのどこかの民族が大自然で太鼓のようなものを叩いている動画を見た。その瞬間、これだっ!と思い早速、調べるとその楽器はジャンベというものらしい。


 特に音階とかもなく、思いのまま好きなリズムで自然に合わせて叩くっぽいので即メルカリで購入した。届くなり早速、叩いてみるとパンパンパンっと軽い反響音がなり、ついに僕にピッタリの楽器を見つけた!と興奮した。


 ただ、狭いアパートの中でパンパン叩いているとかなりうるさい。他の住民に気を遣って思いっきり叩けない。仕方がない。やはりジャンベは大自然の中で思いっきり叩いてなんぼや!と僕は一人、滝のある山の中にジャンベ片手に入って行った。そして滝の近くの岩に腰かけ思いのままにジャンベを叩いた。リズムもへったくれもない。ただ、無心で叩き続けた。


 そしてふと顔を上げるとご年配の方が僕の近くに立っていた。そして小さい声で「あまり迷惑にならないようにね」「何人か引き返してるから」と優しく注意をしてくれた。

 僕は目の前の滝のような汗をかき、「すみません。演奏会が近くて…」と嘘をつき、そそくさとジャンベを担いで帰宅した。


 今、ジャンベの上にはとても可愛い植物が飾られている。


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