夜のゲーセン
僕はヤンキーが怖かった。特に年上のヤンキーが怖かった。
でも、何故かいつも強がっていた。本当は怖いのにヤンキーの横を通り過ぎるときは胸を張って歩いたり、ポケットに手を突っ込んだり…もちろん内心ビクビクしている。
本当にやばいヤンキーに出会ったことがないのか、僕のようなガリガリで見るからに弱そうなやつは相手にされないのか、僕はこれまでヤンキーに一度も絡まれたことがない。(友人Yがヤンキーに絡まれているのを隣で見ていたことはある)
そんな僕は、よくゲーセンに行く。特にゲームをするわけでもなく、どんな人がどんなゲームをしているのか観察するのが好きなのだ。
特に夜のゲーセンは面白い。昼間はカップルや学生、家族連れがよくいるが、夜のゲーセンはヤンキーとゲームオタクしかいない。(もちろん例外もある)
そして夜のゲーセンは不思議なところだなと思う。
ゲームオタクはちょっと挙動不審で自分の世界を持ってるようなタイプの人が多い。
学校にいたらまず、ヤンキーにイジられるタイプの人たちだ。
それなのにその対極にいる2つのタイプが夜のゲーセンでは共存しているのだ。
一昔前はゲーセンでカツアゲなどが頻繁に行われていたのだろうが今はあまり見かけない。というか見たことがない。
ヤンキーがおとなしくなったのかゲームオタクたちが力をつけたのかわからないが嬉しいことだ。
もちろん、僕はオタクサイドの人間だし、オタクの同士でもある。
そんなオタクは自分たちの縄張りを築き上げたのだ。
そして、ヤンキーを排除せず、共存の道に進んだ。なんとも素晴らしいことではないか。
あらしのよるに(オオカミとヤギが一緒に生きていく映画)のようななんとも温かい気持ちに包まれた。
世界もこういうふうになれば良いのにと思いながら夢中でゲームをするオタクっぽい人を見ていたら
「くそ!ミスった!」とゲーム機を叩き、それを見ていた僕に向かって
「なんすか?」と睨んできた。
原因はオタクの肉食化だった。
僕はゲーセンを出るまでポケットに手を突っ込めなかった。