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夕日に誓った約束

高校を卒業し、東京で生活を初めてからの初めての帰省の日、高校の頃、仲の良かった友人Oと遊んだ。


当時、Oは浪人しており外で遊ぶのが久しぶりだとハイテンションだった。


浪人生活は囚人のようで毎日、部屋にこもって勉強をしているそうだ。


人と話す機会もあまりなくとても辛いと嘆いていた。


一年で何日間しかない自由時間を僕と過ごしてくれていることに感謝しながら僕らはデートをした。(男同士)


Oはとても優しい男でいつも僕をリードしてくれる。

「久しぶりの地元(鹿児島県)でしょ?」

「どこ行きたい?」

と言われ、


僕はたいして行きたいところもなかったがなんとなく

「鹿児島市維新ふるさと館」と答えた。


Oはテンションが高かったため

「オーケーー!行こう行こう!」


とノリノリで連れて行ってくれたが、ふるさと館の静かな空間に入った途端…


「休みの日まで勉強か…」

と呟いだ。

僕は無神経だった。彼のことを考慮するべきだった。


結局、ふるさと館でぎっしり学習をし、ランチを食べ、カフェでだらだら語り合って最後に観覧車に乗った。


観覧車から見える夕日に向かってOは明日からまた勉強か…と呟いた。悲しい顔が印象的だった。


そして別れ際、Oがいきなり僕のポケットに手を突っ込んで何かを入れてきた。


僕が「何これ?」

と言うと、彼は照れながら

「コンドーム」と一言。


なんでこんなもの持ってるんだよ!

そんでこれをどうしろと言うんだよ!という疑問が頭の中をぐるぐる駆け回った。


するとOは僕の目をじっと見つめ

「ごっちゃん!(僕のあだ名)東京には夢があるよ!」

「僕はここでは夢が果たせない。ごっちゃんが変わりに僕の夢を叶えてきてよ!」

と言った。


夕日に照らされながら彼の放ったセリフは

まるで映画のワンシーンを見ているような感覚にさせられた。


僕はコンドームを握りしめ

「あぁ…必ず…」

と彼との約束を夕日に誓った。


"汽車を待つ君の横でコンドームを握ってる…"

"季節外れの雪が降ってる…"

"「東京でするのはこれが最初ね」と嬉しそうに 君がつぶやく" 


僕は彼の夢を背負って地元を離れることになった。



いよいよ東京の家に帰る日、空港の保安検査場でやっぱり地元は最高だなと少し寂しい気持ちでセキュリティゲートをくぐると


"ピーーーーーーーーー!!"


僕はいつもベルトで引っかかる。

ベルトを外してもう一度くぐった。


"ピーーーーーーーーーー!!"

心なしかさっきより大きい気がした。


なぜだ?アクセサリーとかもつけてないぞ。

僕が首を傾げていると検査官が


「すみません。ポケットに何か入ってませんか?」

とおっしゃった。


僕は恐る恐るポケットに手を突っ込んだ。

ポケットにはあの夕日に誓った約束が入っている。


しかし、これで引っかかるのか?僕は賭けに出た。

「ポケット何も入ってないです!靴かもしれないです!」

と靴を脱いでくぐってみた。


"ピーーーーーーーーーー!!"


胸の奥のさらなる奥に響いた。

胸の鼓動が早くなる…。やはりこいつが原因か…。


仕方がないので僕は

「あっ!すみません!こっちのポケットにライター入ってました!」


とポケットに手を入れたまま入り口付近の危険物を捨てる透明のボックスにOとの約束を捨てた。


パサッ…悲しい音がした。ごめん…。



僕らの友情はコンドームより薄かった…。

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