趣味とコレクション

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スクーターとの攻防

僕の前をスクーターが走っている。ここは結構な大通り。法定速度は60キロ。
僕の車のメーターは35~40キロの間でゆらゆらと揺れている。真夏の全校朝会で倒れる直前の人のように…。
僕は目線をメーターからゆっくりと上げ、大きく息を吸い心の中でこう叫んだ。


「寄れ!!!!!!」


なぜ、道路の真ん中をよろよろと走っている?!後ろの車の運転手がカンカンに怒っているではないか。歯を食いしばりながらハンドルを小刻みに叩いている。高橋名人じゃないかと疑うほどの物凄い連打だ。



きっとこの運転手は僕がなめた運転をしていると思っているのだろう。違うんだ。前のスクーターのせいなんだ。

このスクーターを追い越そうにも対向車線の車に隙がない。しかし後ろからのプレッシャーが半端じゃないので何とか隙を縫って強引に追い越した。
しかし、あろうことか追い越したのにも関わらず、すぐさま信号に引っかかってしまった。
まさかと思い、サイドミラー見るとするすると近づいてくる。こいつまじかっ!と思ったが不幸中の幸い僕は一番前で停車している。青になった瞬間に加速すれば問題ない。



僕は青になった瞬間にアクセルを踏み込んだ。踏み込んだはずだった。しかし、なぜか僕はスクーターと並走していた。危ないと思いブレーキーを踏み込むとスクーターが僕の目の前に躍り出た。


「ファック!お前、スピルバーグ監督の“激突!”に出てたトラックの運転手か?!」


さすがの僕も腹が立ちすぐさま80キロほどで追い越してやった。このまま差を広げて逃げようと思ったのだが目の前を軽トラが50キロほどで走っていたので僕の後ろをスクーターが走るという形になった。
ただ、さっきは40キロ手前ほどで走っていたスクーターが50キロで走る僕にべったり着いてきている。いや違う。あまりにも近すぎる!と思った瞬間、僕と軽トラの間にスクーターが割り込んできた。


「お前、タイかベトナムで免許取ったんか?」
この国ではスクーターが乗用車を追い越すなんてあり得んぞ!


その後、僕は左折し、スクーターと別れることになったが、“激突!”のトラックのようにそのスクーターは崖に落ちればいいと思った。

人間失格

第一の手記


恥の多い生涯を送って来ました。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。


ポストに不在通知が入っていましたので郵便局に受け取りに行った時の事です。
駐車場に車を停める為、駐車券を取ろうと手を伸ばしたのですが寄せが甘かった為に全くもって届きません。自分はゴムゴムの実というものを食べたことがありませんので窓を全開にして身を乗り出すしか方法がありませんでした。顔を真っ赤にして取ろうとしたとき、後方の車の運転手が何やら小馬鹿にした顔で笑っているではありませんか。多少の悔しさはありましたが、待たしてはいけまいと急いで身を戻そうとするとポケットから車のキーが落ちてしまいました。慌てて車から降りキーを拾おうとしたのですが、落ちた位置を確認できていなかった為に多少手間をかけ、折角、開いたはずのバーが閉じてしまいました。自分はパニックに陥りいました。勿論、後方の運転手は憤慨しています。幸い、再発行のボタンがありましたので助かりましたが後方に車が4,5台並んでいました。


第二の手記
車を停めるだけというのに琵琶湖ほどの脇汗をかいてしまい、この時からすでに“死にたい“という気持ちでいっぱいでしたが自分は郵便局でも罪を犯してしまうのです。
近年、コロナウイルスが流行し、室内に入ると体温測定とアルコール消毒を行うというということが当たり前になりつつあります。機械の指示に従い、顔を近づけると36.8と表示され「正常です」と音声が鳴りました。いつもなら36.1℃ほどなのですが駐車の件で身体が火照っていたのでしょう。内心は“正常”ではなかったのですが、なんとか郵便局に入ることが出来ました。すると少し離れたところにアルコール消毒を行う機械があったので両手をかざしました。しかし、どういう訳か機械から消毒液が噴射されません。少し手を離してみたり動かしたりと試みたのですが一向に反応しないのです。故障かと首をかしげていると後ろから若い女がクスクスと笑いながら「これ、QRコード読むやつですよ」と声を掛けてきました。壊れていたのは自分の脳だったのです。郵便局を出る頃には脇汗がカスピ海ほどになっていました。


第三の手記
車に戻った時には自分の生涯を振り返っていました。今まで順風満帆とは言いませんが、それなりに過ごしてきました。人並みに恋もしましたし、かけがえのない友もいます。しかし、今までこれほどまでに自分を情けない、惨めだと思ったことがあったでしょうか。絶望の淵に立ちながらも車をよろよろと発進させ今度は駐車券を通す機会にしっかりと寄せ、窓から手を出し駐車券を通そうとしました。しかし、何故かうまく駐車券が通りません。少し曲がっているからなのか、しわを伸ばしもう一度通そうとしてもなかなか通りません。すこし強引ではありますが、無理やりねじ込んでみました。すると「駐車券が違います。ご確認ください」と吐き出してくるではありませんか。駐車券を確認するとイオンシネマの駐車券で、捨てずにサンバイザーに挟んだままだった為に郵便局のものと取り違えていたのです。もちろん後方には車が列をなしていました。しかし、この時にはもう何も感じなくなっていました。人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
自分は今年25になります。人生100年時代。4分の1に差し掛かる頃です。最近、めっきり老けたように感じます。

上のまた上

中学の頃、僕の尊敬する野球部のA先輩がいた。

その先輩は野球部イチぶっ飛んでいて野球部以外の生徒にも知られる有名人だった。

とんでもない下ネタを試合中に叫んだり、

僕が新しいグローブを買った日にはちょっと目を離した隙に新品のグローブにちんちんをつっこんで「よし!ここに思いっきり放ってみろ!」とまるで父親のような口調で股を大きく開いたりとやることなすこと最低極まりないものだった。


そんなA先輩を僕はクレイジー先輩と呼んでいたらある日「お前、俺のことクレイジーって言うけど俺には上がいるからな」と言われた。


そんな奴がこの世にいるのか?!と僕は疑心暗鬼が生じたがその人の話を聞いたら納得した。


その人はA先輩と同じ学年で見た目は大人しそうな感じなのだがやることが想像の一歩上をいくらしい。


バス遠足で水族館に行った際、バスの中でA先輩がマイクにおならを吹き込もうとしているといきなり窓を開けて口の中に入っている飴を対向車線に放り投げたらしい。


なんせ高速を走っていた為、飴といえども弾丸のような威力を発揮し対向車線を走っていた車のフロントガラスにヒビを入れた。

さすがに学校としても大問題になり水族館につくなり緊急集会が開かれ、その人は公開説教を受けたらしい。


そういえば僕たちにも先輩たちがやらかしたからバス遠足が今後なくなるかもしれないという噂が流れていた。


でも、その人はかなり怒られたにも関わらず水族館でもやらかした。


先輩たちが行った水族館には"おさわりコーナー"というものがあり、ヒトデやウニ、ナマコなどに触れることが出来る場所があり、なんとその人はそこにいるヒトデを売店まで持っていき「これにします」と言ったらしい。

僕もその水族館には行ったことがあるのだが、おさわりコーナーは4階にあり、売店は1階の受付横にある。



そんな距離をヒトデを持って歩いたなんて驚きだし、「これにします」ってことはちゃんと選んで持ってきてるってことでやばい人だけど、僕としてはセンスあるなぁと思ってしまう。


ただ店員さんとしてはただごとじゃなかっただろう。なんせ、レジの上に体クネクネさせたヒトデがいるのだから…



結局、店員さんがすぐさま引率の先生に報告した為、ヒトデは買えなく、先生に怒られるわでその人はひとでなしということになったらしい。