趣味とコレクション

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まーごっこ

僕が幼稚園の頃、初めて父親に教えてもらった遊びがある。

"まーごっこ"というものだ。


"まーごっこ"とは歩道を歩いている人や、自転車に乗っている人に対して車の中から

"まー"!と叫ぶというものだ。

そして、歩行者や自転車に乗っている人の反応をサイドミラー越しに見るというなんとも品のない遊びである。



僕はこの"まー"ごっこが好きでよく父親と一緒にやっていた。


"まー"ごっこにはいくつか注意することがある。


1つ目は、"まーーーーーー"とのばさないこと。まー!と短く、きれ良く言ったほうが反応がいいからだ。


2つ目は凝視しないこと"まー!"と言ったらすぐ前を向き、反応は必ずサイドミラー越しに見ること。


この2つのルールを守って僕ら親子は楽しでいた。


歩いている人は立ち止まってキョロキョロし、自転車に乗っている人は降りて、ギョッとしていた。


今にして思えばかなり危険な遊びである。自転車に乗っている人がビックリして転倒した場合はどう責任取るつもりだったのか。

僕が親なら絶対子供には教えない。と思う。


ふとそんなことを運転中に思い出し、なんで"まー"だったのかなどいろいろ考えていたら、中学生ほどの男の子が自転車を一生懸命こいでいた。


少しばかりためらいはあったが、

そっと窓を開け、思いっきり"まー!"と叫んでみた。


サイドミラー越しに彼を見ると目を丸くして驚いている。

大成功だ。僕は笑顔でスピードを上げて逃げようとした。信号が赤だった。


目の前の横断歩道を彼がこっちを睨みながら渡っている。


この街に居づらくなった。


親に言ったら"まー"と言われるかもしれない。

ゴジラせん滅作戦

びっくりするほど深い眠りにつく人がいる。


海の底、水深2500メートルの深い眠りにつく男を僕は知っている。友人のYだ。


Yが一度眠りにつくと、もう何をしても起きない。


あれは大学2年の夏、北朝鮮がミサイルを発射したというニュースが話題になっている日だった。

僕は明日、朝イチで帰省しなければいけなかった為、早めに眠りについた。


「ピンポーン。ピンポーン。」


僕の眠りは小学校低学年用のプールほどの深さなのですぐその音に気づいた。

時計を見ると午前2時。

こんな夜遅くに来るのはあの男しかいない。


Yは家に入るなり、

「ごめん!2日寝てない。おやすみ!」

と、早口で言い、部屋の奥に進みながら眠りについた。


僕は呆気に取られ、ただ呆然と立ち尽くしてしまっていたが明日のことを思い出し、すぐさま布団に入った。


「ぐぉぉぉぉぉおおおおお」


忘れていた。彼は深海から雄叫びをあげるのだ。ゴジラも顔負けの声量。これではもう寝れない。


僕は怒り狂った。なぜ、午前2時に起こされ、いびきに苦しまないといけないのか!明日朝イチで飛行機に乗り、帰らないといけないんだぞ!!そしていまさらだけど、なんで2日間も寝てないんだよ!


僕はこのゴジラをせん滅することにした。


デデデン デデデン デデデデデデデデデン

頭の中に流れるBGM。


まず、ゴジラが暴れないように寝袋で包み、紐で縛った。


そして、まず、ガムテープをほっぺに貼り付け思いっきり引き剥がした。


…。やはり手強い。びくともしない。2日寝てないだけはある。


次に、ペットの亀がなかなかに臭い糞をしていたのでそれをピンセットでつまみ鼻のそばに近づけた。


ピクッ。と顔が強張った。効き目があるようだ。しかし、こちらも臭いためこの作戦は中止だ。


少し深海から引き上げた為、イビキが更に大きくなってしまった。


クソッ!だめだ。こうなったら最終兵器を使うしかない。

僕は、ムヒEXを綿棒に染み込ませ、鼻の穴に入れた。


その時、ゴシラが暴れだした。寝袋に縛られてるだけあって、それは地上に揚げられた人魚のようだった。


彼があまりに暴れるので僕もやりすぎたと焦りティッシュと水を持っていき、


「どうした?大丈夫か?」


と聞くと、彼は涙目で、


「ミサイルが鼻の穴に飛んでくる夢を見た」

と言った。


ごめん。ミサイル飛ばしたの俺だ…。

心の中でつぶやいた。


ムヒEXは核兵器並みの威力がある。

そういえば、ゴジラも核実験で産まれたんだっけ?

潔さ

時に潔さは必要だ。

例えば、強打者に対して投げるコースがなくなった時、下手にアウトコースに投げるのではなく、潔くど真ん中に投げ込んで三振を取ることがある。


そういう潔さは見ていて気持ちがいいものだし、成功した場合はもっと気持ちがいい。


大阪で見つけた自動販売機に賞味期限切れの商品を破格で販売しているものがあった。




普通、賞味期限が切れたら処分しなければならない。もう、どうする事もできない。

しかし、それを敢えて潔く、賞味期限切れと宣告し、破格の値段で売ることによって見事、売切れを勝ち取ることに成功している。


賞味期限"切れ"と宣言することによってお客さんから"キレ"られることもない。


この会社はど真ん中のストレートで見事三振を取ったのだ。