隣の席の彼女
飛行機や新幹線に乗って隣の席が空いていると僕はいつも期待してしまう。
もしかしたら、可愛い女の子が乗ってきて
「あっ、どうも」
と最初はぎこちない感じで、
「帰省ですか?」
なんて話して、仲良くなっちゃうんじゃないかとか、つく頃には僕の肩に寄りかかって寝ちゃうんじゃないかとかいろいろ妄想してしまう。
まぁ、実際おっさんが乗ってきて隣で缶ビール空けて、僕の肘掛け奪われるのが常だが‥
しかし、そんな僕にも一度だけ、隣に女性が乗ってきたことがあった。
あれは、広島に向かう新幹線の自由席でのこと‥
2人掛けと向かいの3人掛けの椅子があり、
AB CDE
と席があり僕はAに座っていた。そしてEにおばさんが座っている状態だった。
そしたら前からおそらくアメリカ人の3人家族(父、母、娘)が来て、娘さんは18くらいだろうか金髪でとてもスタイルがよく美しかった。
しかし、お父さんはゴリゴリの自衛隊のようないかついおっさんで
あ、これはBにおっさんでC、Dに娘とお母さんだなと、そして僕は窮屈になり肘掛けも奪われるんだと絶望していたところ
なんと!娘さんが僕の席を指差し「私こっちに座るわ」的なことを英語で言って僕の隣に来るではないか!
ゴリゴリのお父さんは怪訝そうな顔をしていたが僕はもう、これはきたぞと!綾鷹ばりに選ばれたと!有頂天になっていた。
そして、僕は自信に満ち溢れ、話しかけて、このチャンスものにすると心に誓った。
しかし、彼女は外国人、なんと声をかけたらいいのか?!ya!的なフランクな感じでにいけばいいのか?などと考えていたら彼女が座るやいなや
「Hi!」と小声で話しかけてきたので僕はガチガチに緊張してしまい、
「アハーン」と言ってしまった。
しかも声が裏返ってしまってあえぎ声のようになってしまった。
彼女は父親の3倍ほどの怪訝そうな顔で僕を見て首を傾げた。それだけでなくCとD席の両親からも睨まれ、僕は広島までガタガタ震えていた。
自由のない自由席でのお話。