ゴジラせん滅作戦
びっくりするほど深い眠りにつく人がいる。
海の底、水深2500メートルの深い眠りにつく男を僕は知っている。友人のYだ。
Yが一度眠りにつくと、もう何をしても起きない。
あれは大学2年の夏、北朝鮮がミサイルを発射したというニュースが話題になっている日だった。
僕は明日、朝イチで帰省しなければいけなかった為、早めに眠りについた。
「ピンポーン。ピンポーン。」
僕の眠りは小学校低学年用のプールほどの深さなのですぐその音に気づいた。
時計を見ると午前2時。
こんな夜遅くに来るのはあの男しかいない。
Yは家に入るなり、
「ごめん!2日寝てない。おやすみ!」
と、早口で言い、部屋の奥に進みながら眠りについた。
僕は呆気に取られ、ただ呆然と立ち尽くしてしまっていたが明日のことを思い出し、すぐさま布団に入った。
「ぐぉぉぉぉぉおおおおお」
忘れていた。彼は深海から雄叫びをあげるのだ。ゴジラも顔負けの声量。これではもう寝れない。
僕は怒り狂った。なぜ、午前2時に起こされ、いびきに苦しまないといけないのか!明日朝イチで飛行機に乗り、帰らないといけないんだぞ!!そしていまさらだけど、なんで2日間も寝てないんだよ!
僕はこのゴジラをせん滅することにした。
デデデン デデデン デデデデデデデデデン
頭の中に流れるBGM。
まず、ゴジラが暴れないように寝袋で包み、紐で縛った。
そして、まず、ガムテープをほっぺに貼り付け思いっきり引き剥がした。
…。やはり手強い。びくともしない。2日寝てないだけはある。
次に、ペットの亀がなかなかに臭い糞をしていたのでそれをピンセットでつまみ鼻のそばに近づけた。
ピクッ。と顔が強張った。効き目があるようだ。しかし、こちらも臭いためこの作戦は中止だ。
少し深海から引き上げた為、イビキが更に大きくなってしまった。
クソッ!だめだ。こうなったら最終兵器を使うしかない。
僕は、ムヒEXを綿棒に染み込ませ、鼻の穴に入れた。
その時、ゴシラが暴れだした。寝袋に縛られてるだけあって、それは地上に揚げられた人魚のようだった。
彼があまりに暴れるので僕もやりすぎたと焦りティッシュと水を持っていき、
「どうした?大丈夫か?」
と聞くと、彼は涙目で、
「ミサイルが鼻の穴に飛んでくる夢を見た」
と言った。
ごめん。ミサイル飛ばしたの俺だ…。
心の中でつぶやいた。
ムヒEXは核兵器並みの威力がある。
そういえば、ゴジラも核実験で産まれたんだっけ?