趣味とコレクション

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とあるお好み焼き屋

古びたとても小さなお好み焼き屋さんに行った。

団地の中にひっそりと佇む店。


こういう店がうまいんだ。と先輩のMさんは言う。


中に入るとおばちゃんが一人で切り盛りしていて客は常連らしいおじさんが一人。


お好み焼きを焼いている鉄板の前に座り、焼いているのをつまみ食いしていた。


僕は思った。なんでもありだこの店と。


「お好み焼き2つとビール1つ!」とメニューにビールは載っていないのに先輩はビールを頼んだ。


僕は思った。なんでもありだこの人と。


すると、おばちゃんは

「コンビニにで買ってきんさい!」

「それか一本冷蔵庫にあるけどこれ、300円で売っちゃるよ!」

と中からのどごし生の缶ビール(350ml)を取り出した。

「ホントは500円するけんね」と嘘つき出す始末。



先輩も先輩で「それなら買ってきますわ」と言って全く同じのどごし生をコンビニで買ってきた。


僕は中学のマラソン大会で一緒に走ろうと約束したあの日と同じことを思った。


もうついていけない。と


それからおばちゃんはお好み焼きを作りながらちょこちょこ後ろの扉を開けて

「いい加減にしなさいよ!」

と5分おきくらいに怒鳴っている。多分、後ろは部屋になってて中に息子か誰か居るのだろう。

ついには「もう14時よ!ホンマに知らんけんね!」と扉を強く締めた。


アットホームな環境。


先輩も「ホンマに冷蔵庫にあったのってのどごし生やった?」と自分も息子のように怒られるのではないかと気にしている。


するとおばちゃんがこっちに近づいて来たので僕はマジで怒られると怯えた。

先輩も顔がビールよりも冷えきっている。


「ちょっと携帯鳴らんのやけど音量あげてくれん?」

とおばちゃんは先輩に携帯を差し出した。


僕は安堵した。が、すぐさま思った。

お好み焼き!と


おばちゃんが離れたことによってあの常連のおっさんが僕のお好み焼きをつまみ食いをするのではないか。


油断も隙もない。


頼むからおばちゃん、お好み焼き作るのに集中してくれ。


そんなこんなで結局、無事にお好み焼きは僕らのもとに届き、美味しく頂けた。


先輩も結局、ビールを冷蔵庫から取り出し「おばちゃんこれ、貰うねとビールを購入した」

300円で。


ただ、そのビール、缶の周りに油や天かすがべっとり付いてあまり冷えてなかったらしい。


個性溢れる家族の昼食にお邪魔をした感覚だった。

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